女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
夜、一番先にペンキを塗った寝室の壁にもたれて、缶ビールを飲みながら窓から見えるライトアップされた百貨店を眺めていた。
昼に掛かってきた桑谷さんからの電話には出なかった。
きっと売り場を見て私が休みなのに驚いたんだろう。そんなことは私、昨日も一言も言ってなかったから。
私は大きな賭けをしていた。
この3日間、私は連絡不能になる。
売り場には居ない、部屋は空っぽ、携帯には出ない。
二日後には勤務せねばならず、そうなると桑谷さんと会わざるを得ないから、その時点で賭けは終了する。
この3日間で、彼が私を見つけたら。
そうしたら、今度こそ彼を愛そう、そう決めていた。
私の休みを不審に思っても、今日くらいは何もしないだろう、と思う。きっと不思議に思うだろうけれど、首を捻って終わりだろう。
部屋に行くとしたら、多分、明日――――――それから半日くらいでここまでたどり着かなかったら、もうやはり、しばらく男からは遠ざかろう。
人生を運命に委ねたつもりになったのだ。
『どうしても――――――――君が欲しいから』
・・・ならば、見つけてみせて。
私はそう思って、姿を消したのだ。
さてと、と号令をかけて立ち上がった。寝るところまでは確保したけど、ちゃっちゃと片付けなくっちゃ。