女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
通話が切れたのを確認して、録音の再生ボタンを押し、耳に当てる。
『〇〇警察の生田です。小川まりさんの携帯でしょうか。手が空きましたら折り返し電話を下さい。番号は―――――』
意外な人からの電話で驚いた。
斎に神社で襲われた時にお世話になった警官だった。同じ年くらいの、無表情で落ち着いた男性。
アイツが逮捕されたことで何か聞きたいことが出来たのかもしれない。汚れた手をジーンズで拭いて、すぐに掛け直した。
『ああ、小川さんですか。生田です』
生真面目そうな警官と簡単に話す。
あの事件の正式な調書が出来上がったので、確認しに警察まで来て欲しいとの事だった。
訪問の約束をした。
「では、失礼します」
私はそう言って携帯電話を切る。
少し、斎について聞けるかもしれないって期待もあった。
2年5ヶ月付き合っていた悪魔は、私が思っていたよりももっと悪魔だったのだ。
桑谷さんが簡単に調べただけでも私の他に3件も女の人を泣かしていたわけで、警察が調べたらもっとポロポロ出て来そうだった。
その事を考えて少し気分が悪くなり、頭を振って追い出した。
今は、とにかくこの部屋を片付けなければ。