女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私は腰に手をあてて、笑顔のまま彼を見上げた。
「それでいいわ。あなたに、私を、全部あげるんだから」
彼は一瞬、驚いた顔で停止した。
暫く言葉を忘れたかのように無言でいて、そしてやっと少しだけ笑った。
「・・・ホテル、俺のとこ、それともここで?」
私は彼の後ろに手をのばし、玄関のドアをしめた。
そして部屋の中の窓も全部閉めると、新しいのに付け替えて貰ったクーラーのスイッチをいれ、汗を拭いて、汚れた手と顔を冷たい水で洗った。
そして部屋の真ん中に立って、Tシャツもショートパンツも下着も次々脱ぎ、全裸になって振り向いた。
「用意、出来たわ」
腕を組んで壁にもたれ私のやることを見ていた彼が、ゆらりと壁から身を離して部屋に入ってきた。
私は裸のままで歩いていき、まだ無表情で見下ろす彼の首筋に両腕を回して抱きつき、見上げた。
「・・・・本当に、キスはなし?」
ゆっくり、ゆっくりと、桑谷さんが微笑する。
裸の腰に両手を回して私をしっかりと引き寄せ、彼は、なんてこった、と呟いた。
「―――――俺としたことが」
「ん?」
「・・・君に、振り回されっぱなしだ」
そして、ゆっくりと丁寧な、熱くてとろけるキスをくれた――――――――――