女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
・・・・何がよ、と思って凹んでるらしい男を指でつつく。
桑谷さんはちらりと指の間から私を見て言った。ぼそぼそと。
「・・・電話も通じないし、売り場に行ったんだ。福田店長に君の事を聞いた」
「うん」
「そしたら、小川は居ません、これからはここに来ても無駄よって言われた」
・・・・ぶっ・・・・。
噴出しそうになった。
店長ったら・・・まあ、確かに嘘はついてないけど、その言い方・・・。どうとでも取れる言い方だけど、それじゃあ辞めたのかと思っても仕方ないよね。あははは、さすが店長~!!
私が笑ったのを感じたらしく、手を顔から離して、こら、と頭を突かれた。
「売り場でそれ、携帯は通じない、それで慌てて部屋に行くと賃貸物件の札が掛かってた。あまりに驚いて、しばらくそこに突っ立って居たから不審がられた」
このガタイのいい長髪の男がぼーっと突っ立ってたら、そりゃあ不審だろう。警察に電話されなくてよかったよかった。
私は彼を見上げて催促する。
「それで?」
彼は目を伏せて、頭を壁にもたれかけてゆっくりと話した。
「・・・君が自分の意思で出て行ったことは判った。でも前日の売り場でも普通だったし夜の電話でも変わった様子がなかったから、夜から朝までの間に何かあったんじゃないかと思って相当悩んだよ。あまりにも早い行動に本当に驚いたんだ。仕事も辞めたんだと思ってたから、どこを探そうか迷った」
「うん」