女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「取り合えず大家さんに聞くと行き先は聞いてないと言う。俺は君の家族の話は一度も聞いてないし、友達の話も同じ。行きそうな所の見当がつくほど君のことは何も知らない。・・・だから、電波に頼ることにした」
「電波?」
彼は携帯電話を指差した。
「・・・・あれで、居場所がわかるの?」
「判る。君の携帯から発信さえされれば」
へえ~・・・。マジマジと携帯を見詰める。何で?発信機か何か付いてるんだろうか。
「ただ、それには君が携帯を使う必要があった。こっちからいくらかけても出てくれないし、君からの連絡も勿論ない。これはあからさまな無視だな、そう思って腹を立てたんだ。俺は君の動きを待つ気もなかったから、仕方なく電話をかけさせる手を使うことにした。――――警察から電話が行っただろ?」
「うん・・・――――え?」
私は隣の男を振り返る。警察から電話・・・来た。生田さんから。・・・あれって・・・まさか。
マジマジと桑谷さんを見詰める。彼は細めた黒目で見下ろして、淡々と説明を続けた。
「昔、何度か仕事の関係で調査に協力したことがある。君に電話をかけてもらう口実をどうしようかと思ったけど、電話してみたらヤツは君のことを知っていた。・・・守口に襲われた件は、アイツが担当らしいな」
私はただ黙って頷く。
「留守番電話を聞いて君が電話をかけた時に出た電波を、車の中にいた俺はパソコンで調べていた。・・・・また驚いたよ。まさか、こんなに近くに隠れていたとは。まあ、近かったから一発で判ったんだけど」
私は肩をすくめた。