女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
・・・・本気って。うそん。ちょっと待ってよ、コレ程度ではまだ本気じゃなかったってこと?結構頑張ったつもりが、簡単に見つかったのかと思うと悔しかった。
彼はおいで、と私を柔らかく引き寄せて抱きしめ、ぼそりと聞いた。
「・・・・どうして隠れたんだ?」
私は彼の裸の胸に顔を埋めた。そして彼の匂いをたくさん吸い込んで、ゆっくりと口を開いた。
「・・・・賭けてたの」
「うん?」
「・・・・あなたが私を見つけてくれるか、賭けてたの」
彼はひょいと眉を上げて、目を見開いた。
「俺を試したのか?」
「そう。・・・・連絡不能になった私をこの3日間で見つけてくれたら・・・もう怖がらずに、あなたを愛そうって思ったの」
「――――――怖かったのか」
そうよ、そう言って、私は猫みたいに頭を彼にこすりつける。彼のピンと張って滑らかで温かい肌の感触は、一瞬で私を安心させる。
「・・・・人を好きになって、傷つけられて、その人は過去にもたくさんの闇を背負ってた。私はそれを知らなくて、最悪の形で突きつけられたの。次にそんなことがあれば、もう誰も愛せなくなると思った。立ち上がる自信がなかったのよ。・・・あなたの事だって、まだ知らないことがたくさんある。でも、私が欲しいと言ってくれたから」
そう、言ってくれたから。あんなに真っ直ぐと、好意を口にしてくれたから。
「その言葉は信じようって・・・」
桑谷さんは、大きな手で私の頭を撫でた。何か考えてるように無言だった。