女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
パン、と額を叩いていやいや、と首を振った。通りすがりの男性が変な顔をして私をちらりと見たのに気がついたので、ニヤニヤしていた顔を元に戻した。
殺人はダメよ、まり、殺人は。
アイツは一人くらい殺してそうだけど、それでも殺人はダメよ。逃げれる自信もないし。
全てが終わった後、私が幸せになる為には不必要な罪は犯してはならない。あくまでも、最低な嫌がらせを延々と続けるくらいで止めておかないと。
お茶を飲み干し、立ち上がった。
方針が決まった。だからもう今日は斎のことは考えない。早く一人で売り場に立てるように全力で頑張ろう。
ケータイを取り出し、工務店に電話する。
そして夜に部屋の鍵を取り替えて貰う約束をした。
夜。
鍵を取り替えて貰った部屋の中を這いずり回って、メジャー片手に色んなサイズを測りまくっていた。
そしてパソコンを立ち上げ、次から次へと注文する。5万円以内で納めなければ、来月の家賃が払えない。
カーペット、布団一式、本棚、机、食器・・・。キーボードの上で忙しく指を動かして入力した。デザインはある程度妥協して、安さで選んだけど、しめて3万8900円也。
良かった、これで今月も餓死はしなくて済みそう。
体を起こして、ほーっと息をついた。