女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「呼ぶだけ呼んで、一度も見舞いに来ない?」
「怖いんじゃないですか、何かあったらと思うと。友達だと思っていたのは私だけだったとか・・・まあ、男性って、怖がりの方多いですよね」
ちらりと医者を見る。憮然としていた。
「・・・あなたの血液検査では、反応が薄かったんです。常用していたならもうちょっと血液に出るはずなんですがね。・・・自分の薬ではなかったんでしょう?飲まされたのではないんですか?」
両腕を足にのせて前かがみになり、掬い上げるように下から私を見詰めた。
私は無表情でそれを見下ろす。そんな綺麗な顔したってダメよ、貴方には何も言わない。困ったような顔を作るべきか、一瞬悩んでからやっぱりやめる。私は無表情をキープして淡々と言った。
「自分で飲んで、量を誤ったんです」
「どこの病院で処方されたのですか?」
「答える義務はありませんよね」
「警察になら、言えますか?」
「警察に行く理由がありませんから」
しばらくそのままで見詰めていた医者は、体を起こしてため息をつく。
「・・・誰かを庇っているように、私には見えるんですよ。小川さん。その友達のことをもっと教えてもらいたいんですけどね。事件なら、警察に通報する義務が病院にはありますので」
もう一押しだ。私は口元だけで笑って答えた。
「自分の、不始末です」