女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
あとは明日の朝、使ってないブランドの鞄4点を売り払いに行けば多少の余裕も出来るだろう。斎好みのこの茶髪を黒く染めたい。
音楽も鳴らさずテレビもつけず、しーんと静まり返った部屋の中で、ペタンと座り込んでいた。
「・・・・」
何してるんだろう、私・・・・。ほとんどの家具を捨てた部屋で、憎たらしい元彼への復讐を企んだりして。
そんな時間あったっけ?それよりさっさと結婚相手をみつけるべきじゃないの?もしくは正社員のちゃんとした仕事を?そして全部忘れて、平和に暮らすべきじゃあないの?
一体いつから斎は変わってしまったんだろう。
派遣先の出入りの営業だった斎に誘われて飲みにいった。美形に声をかけられたことが嬉しかったし、あの声で話しかけられたらそれだけで幸せだった筈が。
段々、あたりがきつくなってきたのは付き合って半年くらいからかなあ・・。言葉に棘が出だして、私はどうしたらいいか判らずにオロオロしていた。それでもあいつからは別れの言葉は出なかったから、尽くそうと頑張ったんだ。努力すれば、また愛して貰えるかと。
・・・・それなのに。
斎の言葉が蘇る。
『お前みたいなぼろ雑巾女に付き合ってやってるのは、家政婦が欲しかったからなんだよ』
『たいした体でもねーのに抱いてやったんだ』