女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私は受付嬢で鍛えた華やかな笑顔を意識しながら、にっこりと微笑んだ。少しだけ歯を見せ、目元全体を柔らかく細めて笑顔を作り出す。
姿勢は真っ直ぐに。震える手はぐっと握り締めて。
うまく笑えてるかな?
艶やかな笑顔になってるかな?
私の笑顔に気がついて、カウンターの前に立っていた福田店長も後ろを振り返る。そして、ああ、と声を出した。
ノートを閉じてカウンターの前に出てきた斎に向かって声をかける。
「守口店長、昨日からうちに入ってくれてます、こちらは―――――」
「小川です。お久しぶり、守口さん」
後を引き取って、私が静かな声で言った。
え?と福田店長が振り返る。
「小川さん、知り合い?」
竹中さんが斎と私を見比べながら言った。
こちらに顔をむけた福田店長の後ろで、斎の顔がひきつって歪んだのを確認して、私は更に笑みを大きくした。
「ええ、以前お付き合いしてたんです。まさか、ここで会うとは」