女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
この制服は、和菓子のメーカーの女の子か、と冷静に観察した。学生のアルバイトらしい、それほど化粧気のない顔には驚きと焦りが見えた。
「だ・・・大丈夫ですか?どうしたんですか?」
通路の入口あたりで口元を片手で押さえてオロオロする女の子に手をあげて、私は静かに言った。
「守口さん、お腹が痛いんですって。連勤でお疲れなのよね、きっと。医務室に行ったら、と勧めてるんだけど・・」
連勤かどうかなんて知らないが。ま、いっか。
まだうずくまったままの斎の横にしゃがみ込んで、私は背中をさすりながら言う。
「大丈夫ですか?守口店長」
ああ、今包丁を持っていたなら迷わずこの背中に突き立ててやるのに。そんなことを思いながら、背中をさする指の爪をゆっくりと立てる。
唇をかみ締めた斎が物凄い形相で私をにらみつけた。額には脂汗が浮いている。私の蹴りはよほどいい場所にヒットしたらしい。
その凄い顔を女の子の視線から体で隠してあげて、私は斎の耳元でそっと囁いた。
「・・・あんたと付き合っていた最後1年半ほど」
睨みつけていた斎の瞳がいぶかしげな表情を見せた。
更に低い声で静かに言った。
「・・・・私、抱かれてイッたことなかったの」