女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
5周年記念パーティー
その夜も、スーパーでの買出しにビールをつけ、部屋で乾杯した。気分よく飲んで、テレビのバラエティ番組を見てげらげらと笑う。
最初の仕返しが成功して、機嫌がよかった。
アイツはお金の話を持ち出すと、急に懐柔策に出たわけだ。ってことは、やっぱり盗んだのはあの男だったのだ。
自分の魅力に再び私が虜になれば全てうまくいくと踏んだんだろう。
警察にはばれてないみたいだし、小川まりは普通の顔をしてやってきたから大丈夫だろうと。
そして笑顔とキスで攻略しようとした。
この女が俺にまた夢中になりさえすれば、余裕だって。
・・・・全く、バカにすんじゃねえっつーの!!!
ビールの缶を握りつぶして台所のゴミ箱に向かって投げた。それは見事な螺旋を描いてちゃんとゴミ箱に着地する。
「ナイッシュー!!」
一人でガッツポーズを作る。
あの時の私は、とても、冷静だった。
もしかしてドキドキするかもと思ったけど、あの美形が顔を近づけてもただじっと観察しただけだった。
心底冷めているのを感じた。もう大丈夫だ、私は。これからアイツがどういう態度に出るかは知らないが、もうあの瞳によろめくことはないだろう。まああそこまでバカにしたんだから、アイツがまだ私に擦り寄るとは思わないけど。
酔っ払った頭でそう考えて、くっくと笑った。ああ、いい気分。もう一本ビールも飲もうかな。