女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 来月は百貨店のオープン5周年記念のパーティーがあるらしい。従業員の食堂に集まって、フリードリンクとフリーフードでお祝いし、従業員一同の結束を固めるのだと小林部長が朝礼で言っていた。

 参加は自由だが、家庭を持つ主婦パートや当日休みの者、各メーカーのアルバイトなんかの参加は少ないらしく、盛り上がりに欠けるからとそれぞれの売り場から最低でも一名は参加しろとお達しがあった。

 そんなわけで、各メーカーは仕方なく店長が出席するらしいが、うちの売り場からは私も参加することを言ってある。

 貧乏人に、フリードリンクフリーフードは魅力的だ。どうせ出勤だし、楽しみにはしてないが、晩ご飯は当てにしている。一緒に行っていいですか、と店長に言うと、話し相手が出来たと喜んでくれた。



 6月になった。

 洋菓子売り場は暫く寒散としている。5月の連休と子供の日のプレゼントが終わり、6月の中旬に始まる中元ギフトの早割りが始まるまでの小休止だ。

 贈答品のお菓子が出なくなるので、売り上げは厳しいが販売員は店の整理が出来る。店側もこの時期を狙って社員旅行や研修をいれるようにしているみたいだった。

 その合間をぬって催される百貨店のパーティーは、当日の遅番が上がってからでも間に合うようにと時間が遅めに設定されていた。

 惣菜の余ったものなどを百貨店が買い取って出すらしく、デパ地下の惣菜をタダで食べれるけど、余らなければ焼きそばにまでご飯のランクは落ちるのよ、と店長が言っていた。


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