女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「よく判ります!うちもダンナと喧嘩すると、私ってこの人の一体どこが好きなんだっけって・・・」
話題が竹中家の大黒柱にうつったのでホッとした。
斎の噂は出来るだけばら撒きたいが、アイツと一緒に噂になることだけは避けたい。そんなことになると、更に色々面倒くさいことが起きそうだ。
あ、そうだ、と思って、まだ夫婦喧嘩の話を続けていた竹中さんを振り返る。
「ごめんね、話途中で。前に聞いたんだけど、守口さんて今小林部長の娘さんと付き合ってるんでしょう?」
ゴシップ大好きで、しかも暇な竹中さんはすぐに食いついた。
「あ、聞きました?そうなんですよ~、3階のレディースの、小林さん。去年の冬の歓送迎会で出会ったらしいですよ~」
・・・・去年の冬の、歓送迎会。
――――って、畜生、あの男やっぱり浮気してたのか。
10月くらいからクリスマス終わるまでほとんど会えなかった去年の冬を思い出した。
その小林さんにひっついてたわけね。え?ちょっと待ってよ・・・・なら、無理して私を抱かなくてもよかったじゃん!・・・あんなに嫌だったの、我慢してたのに。
その時ちゃんと「好きな人が出来たんだ」って私を振ってくれてたら、今頃こんなことには、と思ったらムカついてきて、ちらりと斜め前の店で働く斎に鋭い視線を向ける。
竹中さんは目ざとくそれを見つけて、何で睨んでるんですか?と聞いてくる。
「・・・去年の冬は、まだ付き合ってた」