女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
ぽん、と手の平をこぶしで叩いた。
おおお~!!本当だああああ!ペアで見れるんじゃない?彼女がどういう人をみて、次の作戦を考えないと。
密かに興奮して喜んでいたら、お客さんが多くなりだした。
ただでさえ少ない今日の売り上げを逃してはならない。
斎のことを頭から追い出して、接客用の笑顔を浮かべた。声をかけ、商品の説明をする。
お楽しみは今夜。
それまでは、パーフェクトな販売員にならなくては。
注文を頂き、熨斗体裁を聞き、包装して会計を済ませる。その一連の動作に集中した。
早番だった私は6時半に売り場を上がり、福田店長との待ち合わせ時間まで、百貨店に引っ付いている商業施設をぶらぶらして過ごした。
従業員のトイレよりも綺麗で使いやすいのでと、そこでトイレも済ませる。そして化粧を直し始めた。
30歳になって、しみも皺も出てきたけれど、10代20代の時にあった張りのかわりにしっとりとした艶がある肌にパウダーをかぶせる。
何事にも経験、とはよく言ったものだ。
派遣が長かったせいで、というかお陰で、私は一通りのことが出来る女になっていた。