女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私のいいざまに、さすがに斎もムカついたようだった。切れた唇をかみ締めてぎろりと睨んでくる。
どうしてあんたが怒るのだ。腹を立てていいのは私だけでしょうが。また少しずつ、怒りがこみ上げてくるのを感じて私は目を細める。
「聞きたい?一つ二つ、並べてみようか?」
私は完全な無表情になって言葉を並べ立てた。
「付き合ってきた中での数々の暴言が許せないわ。私はあんたの家政婦なんかではなく、両親に大切に育てられた娘なのよ。あんたとは赤の他人で、ボロボロにされていい人間じゃあないの。あんたがパクッてきた睡眠薬を飲んだ私が倒れると救急車を呼ぶだけよんでさっさと逃げたのも情けないわ。それでよく普通の顔して社会に出られるわね?小学生だってもっとマトモな対処するわよ!しかも、挙句の果てに私の貯金まで―――――」
「判った!・・・もういい」
パッと手を振って、斎が顔を背けた。
私は壁からゆっくりと背を離して、乾いてしまった唇を舐める。勿論、いい足りない。出来ることなら今すぐにでもこのまま階段から突き落としてやりたい。
「バカな男と付き合った私もバカだったのよ、だから、もうそれはいいわ」
ちらりと斎が私を見る。眼が不安気に泳いでいるのが滑稽だった。
「・・・目的はなんだって、聞いたわね」
私は自分でも驚くほどの低い声で続けた。
「私の時間とお金を返して頂戴」