女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
中元の早割りが始まった。
各店ギフト商品をそろえて、催事場にての販売が始まる。
本格的な商戦は7月から8月のお盆までなので、始まったと言ってもまだまだ売り場は平常だった。
階段での斎との殺気立った会話の翌日、ヤツがふらりと私の売り場に来て、一人で店番をする私にぼそりと呟いた。
「金は、返す」
私はその彼をじっと見詰めた。
「・・すぐにとはいかないけど」
斎は真面目な顔をしていた。私は肩を竦めて頷く。
「判った」
斎は自分の売り場に戻っていく。バイトの女の子や周囲のパートさん達の好奇に満ちた視線を避けていた。私はその後姿から目を外して、用もないのに店のパソコンを開ける。仕事してますので話しかけないで下さい、の図だ。
どうするつもりだろうか。201万は、そうそうすぐには返せないはずだ。
あの男が彼女に借りたり、金融機関で借りたりなどとは信じられない。個人的にはローン会社やヤクザで借りて返せなくて勝手に破綻ってなパターンが望ましい(そのまま行方不明になってくれても構わない)が、それでもローン会社に迷惑がかかるしな。