女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
その日は遅番を終えてから翌日から始まる催事の手伝いをしていて、福田店長に、これをストックにしまってくれたら上がっていいわよ、と言って貰った後だった。
「はーい、それじゃあ、このパッキンを棚に直して帰りますね。お先に失礼します」
私は凝りまくった肩を上げ下げしながら言う。
ご苦労さん、と笑顔で手を降った店長に会釈をして、私物鞄とダンボールを抱えてストック場へ向かった。
ああ~・・・結構疲れた・・・もう9時半じゃん。ううー、こんな日はビールが飲みたい・・・。
ぼんやりそんなことを思いながら倉庫へ行き、指示通りにダンボールをスチール棚の空いてる場所に突っ込む。
さて、と体を起こしかけて、私は何かに滑り、バランスを崩してしまった。
「ひゃあ!」
何とか体勢を保って足元を見ると、隣の店のダンボールが床に敷いてある。それで靴が滑ったようだった。
わお・・・あ、危ない。
「・・・何でパッキンが床に敷いてあるの?危ないじゃない・・・」
倉庫の狭い棚の間で私物鞄を置いて足元のダンボールを取ろうとした時だった。
右側のスチール棚が、いきなり大きく揺れたのだ。
―――――――――え?
とっさに頭上を仰ぎ見ると、大きく揺れた棚の一番上に置いてあるダンボール箱が滑り落ちるのが、見えた。