女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 細めた瞳からは悪意しか感じない。寒々とした雰囲気を全身にまとって、私を見下ろしている。

 ―――――――――お前か。

私は片手で汗を拭い取った。

 ・・・背後だけでなく、頭上にも注意が必要だったってことね・・。私自身を落として失敗したから、物を私に落とすことにしたってわけ?

「――――――・・・ええ、残念ながら、無事よ」

 スカートにも関わらず大きく開いていた両足を閉じ、ひしゃげて潰れているダンボールをヤツに向かって蹴っ飛ばした。

「無事だったなら、それに八つ当たりするなよ」

 ニヤリと笑って斎が言う。

「・・・あんたが私を殺したがっているのはよーく判ったわ」

 食いしばった歯の間からそう言葉を押し出すと、斎はヒョイと肩をすくめて両手を挙げて見せた。

「まさか。そんな恐ろしいこと」

 ヤツは口元に薄笑いを貼り付けている。それを見ていたら瞬間的に激しい怒りが湧き上がってきた。怒りに突き上げられて、恐怖はどこかへ飛んだらしい。体の横でこぶしを握り締めて私は叫ぶ。

「さっさとお金を返して自由になったらいいじゃないのよ!ろくでなし!!」


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