女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「俺は今でも自由だぜ」
「くっそバカ野郎~!!」
「・・・まり、お前、そんなに口が悪かったっけ?」
ちょっと呆れた顔をしていたけれど、ヤツはひょいと肩を竦める。
「ま、いいや」
それより、と呟きながら近づいてきた斎は、さっきまでの邪悪な表情を消して、まるで清純そのものって顔をしていた。
な・・・何だ何だ!?次は何をしようって言うのよ?私は思わず下がって、座り込んでいた地面からパッと身を起こした。
斎は近づいてしゃがみこみ、膝をついて中腰になった私と目線を合わせる。
「もう俺達、やり直せないのか?」
「――――――・・・は?」
万が一に備えて近くにあったプラスチックの備品を掴んでいた私は呆気に取られた。
どんな罵り言葉にも驚かなかっただろうが、これには度肝を抜かれた。開いた口が塞がらない、とはこのことか。
ぽかーんと口を開けた間抜けな顔のままの私の前で、天使みたいな表情の斎は柔らかく言葉を続ける。
「よく考えたら、俺達ちゃんと別れたわけじゃないよな。でも、そこを敢えて、もう一度付き合えないか?」
・・・何だ、こいつ??もしかして今まで人間だと思ってたけど、実は宇宙人だったとか?そんなバカなことを考えながら、相変わらずマヌケな顔で私は言う。