女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・何言ってんの?頭、大丈夫?」
傷つくぜ、そのセリフ、と頬をかく斎を呆然と眺めた。
何だって?今、こいつは何てった??
「・・・斎は今、小林部長の娘さんと恋人なんでしょ?」
私の問いかけに、ヤツはまた肩を竦める。その動作にイライラした。
「その前にお前とは終わってない」
全く会話になってないじゃないの~!!埃まみれのお尻を払うことも忘れて、膝を床についたままの格好の私は眩暈に襲われた。
ああ、本当にイライラするったら!
「倒れた私をほったらかしにした時点で関係なんて終わってるっつーのよバカ男!」
「ちゃんと救急車呼んでやっただろ?」
「あんたは私のお金を取ったのよ!?本気でよりを戻そうなんて一体どの口が言えるのよ!」
ああ、目の前の男を血だらけになるまでひっかきたい。でも残念なことに、百貨店の食料品売り場で働くにあたっては爪を伸ばすなどご法度なのだ。武器のない指先を恨めしく見詰めて、私はどうやって攻撃をかますべきかを忙しく考えた。
「終わってるならまた始めればいいだろ。俺達、カップルに戻ろうぜ、まり」
「あんたがバカなのは判ったって言ってんじゃないの!この間も今も、私を殺しかけたんでしょうが!!」
「今のは俺じゃないって。不幸な偶然」