女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・・・今、取り込み中でね、外して貰っていいですかね」
背中越しに顔だけそちらに向けた斎が低い声で言う。桑谷さんは、私をチラリと見て、無表情のまま口を開いた。
「・・・その人、嫌がってるようにみえるけどな」
その見透かすようなあけすけな視線に、私は思わず顔を伏せる。
くそ、邪魔が入った・・・。斎がそう小さく呟いたのを聞いた。
「まり、飯行かないか?」
顔をこちらに戻した斎が慎重な声で聞く。私は即行でぶんぶんと首を振った。今度はご飯に毒でも入れるつもりでしょ、と言いかけて、無理やり飲み込んだ。ダメダメ、まだここには他の人がいるんだった。
おい―――――――と斎が言いかけた声に被せて、桑谷さんが言った。
「俺と行こうぜ。さっきから待ってたんだ」
「「は?」」
斎と私の声が被った。二人で揃って入口に立つ桑谷さんを振り返る。
「小川、さん。飯に誘おうと思って待ってたのに出てこないから、見に来た」
人差し指で私を指差して、口元に笑みを浮かべる桑谷さんをじっと見た。
「・・・・待ってた?私を?」
「そう」
斎が立ち上がって、イライラした様子で突然の侵入者に向き直る。