女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
不思議な男。
出たとこで待ってるからと言い残して、さっさと彼は行ってしまった。
私はロッカーで機械的に着替えながら、今日起こったことを考える。
職場の倉庫で死にそうになって、その原因を作った男に迫られた。簡単に言うとこうなるわよね。
・・・・・あのバカは、何考えてんだろう・・・。
懐柔策は諦めたはずではなかったのだろうか。それにしたって殺そうとしている相手に言い寄るメリットって、何?もう一度付き合ったらお金のこともチャラにして貰える自信があるってこと?
・・・・それに。
「別に、好きだとかいわれてないしな・・・」
斎が私のことを愛情を持っているとは思えない。以前は少しはあったかもしれないが、あのゴタゴタがあった後に私がしてきたことを考えたら、恨みこそすれ愛情を持つなんて有り得ないだろう。
部長の娘さんのことも話を逸らしただけで、やっぱり付き合ってるんだろうし。もし私があそこでうんと言ったら、ヤツはどうするつもりだった?
キスをして。
抱きしめて。
そしてまた――――――――――命を狙う。
落ちてきたダンボールを思い出して身震いした。
いやいや!病院送りは一回で十分よ!!偶然であんな頑丈な棚が揺れるわけがない。やつがあそこにいたタイミング、最初の憎悪に満ちたあの瞳が全てを物語っている。
・・・・・畜生、あの悪魔。