女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
ロッカールームの鏡でざっと姿を点検する。埃のついていない私服に着替えて、髪の毛だけをパッと整えた。
・・・・化粧、直す?
鏡の中の私はうんざりした顔をしていた。
・・・ってか、行かなきゃいけないんだろうか。ご飯。
時計を見るともう10時で、死にかけたし疲れてるしで、知らない男と食べに行くのは面倒臭かった。だって、行ったとして一体何話すのよ。
・・・ううーん・・・。ロッカールームを出ながらも考えた。
だけど、だけど。
とにかく、ショックでマヒしていたけれど、お腹が空いていることは事実だし。何と言っても命の恩人だし(ある意味今日だって助けて貰ったわけで)。どっちにしろご飯は食べるんだから、いっか。
ため息をついて、よし、と呟く。
時間も遅いことだし、さっさと食べてお礼を言って帰ろう。今日は財布にもちゃんとお金は入ってるし。
結論が出ると、近いトイレによって簡単に化粧を直した。5分もかからなかった。
店員入口を出ると、少し離れたところで壁にもたれていた大きな人影がゆっくりとこちらに歩いてきた。
私は足を止めて彼をじっと見詰める。
・・・大きな人だ。彼は両手をポケットに突っ込んでいて、鞄などは持っていないようだった。