女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 チラリとこちらを見て、桑谷さんが言った。

「・・・・さっき、倉庫で守口に口説かれてるように見えたけど。でも、君は何か物騒なこと言ってなかったか?殺されかけた、とか何とか」

 箸を止めてしまった。一瞬間があいたけど、また黙々と口に運ぶ。

 まだ横から見詰める視線が痛かったので、私は料理を見たままで言った。

「ガリフの守口さんは私の元彼です。ちょっとふざけてたんでしょう。私をからかって――――」

「殺されかけた云々は?」

「・・・言いましたっけ?」

 隣の男を振り返った。私はかなり無表情だったと思う。しばらく黙って見ていたけど、ヒョイと肩をすくめて、桑谷さんも食べ始めた。

「・・・謎の女だな」

「あなたも、私にとっては謎ですよ。どうしてご飯に誘って下さったんですか?」

 横目で隣の男性を盗み見る。すぐには返事を寄越さずに、彼は口元を緩めた。

「お待たせしました~!」

 元気な店員さんの声で、そこにあった緊張した空気が一瞬破られる。

 揚げ出し豆腐や豚平焼きなどが目の前に並び、しばらく二人とも料理に集中した。お腹が空いていたのだ。丁度空になったビールのお代わりを頼んだら、俺も、と横からもジョッキが差し出される。

「・・・・気になった女性をご飯に誘ったってだけ」

 ついでに質問の返答も来た。


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