女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
私はじっと相手から視線は外さないままで、ビールを飲み干してカウンターに置いた。
口の中に溜めたビールを喉を鳴らして飲み込む。苦さに一瞬眉を寄せたけど、そのままで口を開いた。
「・・・答えなきゃいけませんか」
ビールを飲み込む私の喉元を見ていたらしい桑谷さんが、目線を合せて二カッと笑った。
「それ知らなきゃ、困るんだよな。――――――――俺、君に手を出すつもりだからさ」
驚いた。
何て直球の男なんだろう。
しばらく間を開けてから、私はボソッと聞き返す。
「・・・付き合っている人がいるかは聞かないんですか?」
彼の子供のような豪快な笑顔が、目をすっと細めた微笑に変わった。途端に雰囲気が変わって、私はそれを驚いて眺める。色々と奥の深そうな男性だ―――――――――――
「そんなのカンケーねえもん。例え彼氏がいても、そいつの事を君が好きかどうかが問題なんだ」
ふうん、成る程ね。私は彼から目を外して頷いた。‘好きな男’がいないんなら彼氏がいても関係はない、とは正論だな。多少乱暴ではあるけど・・・。
手を出したい、とは・・・。紛れもなく、欲望の対象となっているってこと。こんな感じ久しぶりだ。私を女として認めてくれる男と話すのは。
―――――・・・・でも。