女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
話すのは気が進まない。だけど、彼はこんなにも直球で勝負をかけているのだ。だったら私だってちゃんと相手をしなきゃいけないわよね。
ため息を飲み込んで、ゆっくりと口を開く。
「どちらもいませんが、私はおすすめしません」
あん?と声をあげて変な顔をした隣の男をチラリと見る。
生ビールも中ジョッキで4杯飲んでるし・・・別に、この人にドン引きされたってどうということもないし・・・。
酔いにも勢いを借りて、努めてさらりと言った。
「私、不感症かもしれませんから」
彼は噴出しはしなかったけど、多少むせた。
ごほごほと咳き込む男から目を背ける。。
まさか、そんな答えが返ってくるとは思わなかったのだろう。
「こほっ・・・じ、自分でそう思ってるってこと?」
私はお箸をそろえて箸置きに置く。おしぼりで手を拭きながら、小さく話した。
「・・・感じなくて、仕方なく演技をして、それが苦痛で、半年以上はご無沙汰で。不感症なんだろうなあ、と思ってるんです」
「相手は一人?」
「何て事を」
ジロリと睨むと、彼は簡単に降参のポーズで両手を上げた。