女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「悪い。でも同じ相手なら、ヤローが下手なだけじゃねえの、と思って」
私は首を少しだけ捻る。別に斎を庇うつもりはないが、そんなことはない・・・と思う。
「・・・そんなことはないと思うけど。ずるずると付き合っていて、私はとっくに冷めてたんだな、て最近気付いたし。感じられないとしたら原因は私にあると思う」
「なら、さ」
桑谷さんは椅子の背にだらりともたれて、明るい声で言った。あっけらかんと。
「俺を試してみない?」
その言い方に呆れた。
「・・・軽ーい」
相手を横目で見ると、彼は苦笑しながらヒゲの伸びかけた顎を撫でていた。
「真剣に言えば、チャンスをくれるのか?―――――――――それじゃあ・・・」
何かを企んだような声にパッと振り返ると、いきなり腕が横から飛んできた。
驚いて固まる私の椅子の背に右腕をのせてぐぐっと体を寄せる。そのままで唇を近づけ、無防備な私の耳元で静かに言った。
「このあと時間は?―――――――今夜一晩、俺にくれないか」