pianissimo.
「いいよ」


ライガのうなじに両腕を回して、ライガの頭を抱き締めた。私がこんなことするなんて……。自分自信に驚愕する。けれど、自然に身体が動いてしまったから仕方ない。


私の頬にサラリと触れるライガの黒髪が愛しい。愛しさが溢れて耐え切れなくなって、両腕にぎゅうっと力を込めた。



と、鍵を差し込む音が出入口から聞こえた。ライガは弾かれたように身体を勢いよく起こして私から離れ、風のように走り去った。


本当に目にも留まらぬ速さで、私が瞬きをしている間に消えた。


多分、屋上出入口の影に身を潜めたんだと思う。


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