pianissimo.
「好きなの?」


そう聞かれ、思わず目を見開いて郁香の顔をまじまじと見た。まさか、こんな直球で来るなんて……。



「ちっ、違う!」

どもった。これ、肯定に果てしなく近い否定。ほぼ真っ黒な灰色。



「こないだから思ってたんだよねー」

「こないだ?」

「ほら、ライガのこと『不良』呼ばわりしたら、ラッシーやけにムキんなって突っ掛ってきたじゃん」

「ああー……。別に突っ掛ってなんか……」


もう無理だ。とんでもなく苦しくなって来た。全部吐き出してしまいたい。



「好きです」

伏し目がちにポツッと落とした告白。



「えーっ!」なんて、大袈裟に驚いて見せる郁香を、リアクション王に認定したい、と思う。薄々勘付いていたってさっき言ったばかりなのに、何だよ?


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