pianissimo.
「彼女いるのに?」

「うん。別にそんなの、どうでもいい」


「まぁ、その彼女、浮気してるって噂だけどね。金持ちのお坊ちゃまと。2年の子だったかなぁ……」

「え?」

「ラッシー知らないの?」


郁香にそう聞かれ、小首を傾げて自分の記憶の中に有るっぽい何かを探ってみる。



『彼女も他のヤツと帰ったから、いんじゃね?』



あの雨の日、ライガが言った言葉を思い出した。

ライガは平気そうだった。そう見えただけかな? もしかしたら、気にしていない風を装っていただけかも。


気にしているからこそ、その腹いせに私なんかと……。

そう思ったら、胸がズキリと痛んだ。望みのない恋なのに、おこがましくも傷付いている自分がまたイタくて、泣きそうになる。


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