pianissimo.
動揺しきってしまい言葉が出て来なくて、縋るような想いでただ、郁香を見詰めた。



「ライガ……なの?」

郁香は躊躇いがちではあるけれど、確かめるように私に聞く。


相変わらず喉を鳴らすことができない私は、コクンと小さく頷くのが精一杯だった。



眉間に皺を寄せ困り果てたような顔をして、郁香はフゥと小さく溜息を漏らし、

「また、あの子の嫌がらせ?」

私が全く思い付かなかったことを、スルリと口にする。



そっか。

ライガがわざわざ、行為の最中に私に電話をかけて来る訳がない。姫花ちゃんが、どうやってだかはわからないけど、ライガに気付かれないように――私に電話を?



けれど――

ライガの携帯電話がそこにあるということは、姫花ちゃんに、こんなにも色艶のある声を出させているのは、ライガに違いない訳で……。


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