pianissimo.
郁香に全部、話してしまおうか……。


けれどそんなことしたら、きっと郁香に叱られる。酷く心配される。彼女がいる男子に想いを寄せるのは、自分が傷付くだけだから止めておけって言われる。


それでもいいか。



「ライガに好きって言われた」

何から話せばいいのか全然わからなくて。いきなり突拍子もないことから暴露して、とんでもなく郁香を驚かせた。


「えっと……」

郁香が言葉を詰まらせる。けれど、何か考えているような少しの間を置いて、再び口を開いた。


「それは……ライガ本人に言われたの?」

「うん」

「でもライガ、彼女居るじゃん」

「うん」

「『うん』って……」


プツッと――

そこで会話は途切れ、郁香はまた黙り込んでしまう。


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