pianissimo.
ライガはパチッと大きく一つ瞬きをする。

自分がどれほど目立つ存在なのか、今更知ったのか、と呆れた。お気楽、無自覚、無関心、本当に幸せ者だね、君は。



「どうでもいい」

「え?」

「そんなんどうでもいいから、俺は凜子先輩に笑って欲しい。ねぇ、どうしたら笑ってくれる?」


言ってライガは身を屈めて、私と目線の高さを合わせた。至近距離から真っ直ぐに向けられる眼差しに、私の全身がカッと瞬時に熱を帯びる。咄嗟に顔を背けて俯いた。



「そういう思わせぶりなこと言うの、やめて欲しい」

一生懸命絞り出した声は、変に上ずっているし、震えている。恥ずかしい。この場から消えてなくなりたい……。


< 74 / 401 >

この作品をシェア

pagetop