pianissimo.
どうかもう、ライガは居ませんように。心の中で祈りながら重い鉄扉を押し開け屋上へ出た。



空が近い。灰色に包まれているように見えるそこは、どんよりと薄暗くて何だか気味が悪い。こんな日に屋上へ来るなんてバカだ、絶対バカ。ライガのバカ。


探さなくたってすぐに、視界に飛び込んで来た。だだっ広いスペースのど真ん中にライガは居た。大の字になって寝転がっている。



高い所って気温が低いのかな。肌寒い気がする。両手で自分を抱き締めたらブルリ、意識していないのに身体が震えた。


ライガももちろん夏服。あんな格好で寝ていたら間違いなく風邪を引く。それより何より、間もなくここは閉鎖される、出られなくなる。


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