月の綺麗な夜に。
『お母さん〜。』
いくら呼んでも返事がない。
『何処にいっちゃったの?』
見渡してもお母さんがいない。
『お母さん〜。お母さん〜!』
先に帰っちゃったのかな?
『晩ご飯の用意があるから先に帰ったんだよね?もうちょっと待っててくれたらいいのに。』
土手に登って歩き出す。
自転車が向いていた方向の反対に行けば帰れるはずなんだけど。
生まれた時に段ボールに入れられた事などすっかり忘れていた私は、捨てられたなんて、全然気がつかないで家路に着いた。