月の綺麗な夜に。
家路
「ただいま。」
「おかえり。」
洋子が仕事から帰ってきた。
「卓也ちゃんは?」
「さあ?また飲みに行ってるんじゃない?」
「ふ〜ん。今日の晩ご飯は何?」
「今日はお父さんが建前だからお赤飯を持って帰るって。」
父の真治は鉄骨屋に努めているので、たまにお赤飯と鯛の塩焼きをお土産にもらってくる。
「チャゲ!」
「チャゲ、チャゲ!」
「お母さん、チャゲは?」
母は聞こえないふりをしていた。
「お母さん。チャゲは!」
「捨てて来たよ。」
いつまでも知らん顔が通せる筈もなく、渋々答えた。