待ち受けカノジョ。
オレの長い話を、だまって聞き続けた奈緒。

「ま、“初恋の思い出”ってヤツ?」

初恋を語るなんて、オレは女子か!

やっぱハズカシイや!


「…初恋?」

奈緒の言葉に、オレはテレながらうなずく。

「おとなしめの子だったからさ、その子の笑った顔が見たくて、必死でいろんな事やってたんだよ、オレ。あれは、確実に恋だな」


奈緒が体をのりだして訊いてくる。

「ねえ、名前は?その子の名前、覚えてる?」

名前かぁ~

実は、そこらへんの記憶は曖昧なんだよなぁ。


「えーっと、たぶん、前島葵だったかな?みんなからは『あおいちゃん』って呼ばれてたと思う」

「そっか。前島さん、ね…」


そう、葵。


「それがさ、明日その葵に会えるんだよ!」

この間、奈緒にナイショでコッソリ公衆電話から悠人に電話した時、教えてもらった。

「やっと渡せるよ!まぁ、あっちが忘れてなければの話だけど」


「滝山くん、あのね」

奈緒が何か言いかけた時、

「順平ー!ちょっと来てー!」

友美さんが呼んだ。

「分かった、今行くー!」

奈緒をポケットに入れて、リビングに向かった。
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