待ち受けカノジョ。
海の家“うえはま”から、麦わら帽子に白いランニングシャツの、海賊王になれなかった爺さんが現れた。


「おっ!お前は…ペイ太郎じゃないか!」


しわっしわの黒い顔で、所々抜けてる歯を見せながらニィッと笑う。


「悠人のじーちゃん!まだ生きてたのか!」

「ガハハハ!相変わらず口がへらねぇ野郎だな!」

元気そうで良かったよ、じーちゃん。

でも、なんでオレのあだ名は『ペイ太郎』なんだ?


「また俺の店で、ぼらんてぃあしてくれんのかい!?」

「うん!そのかわり、悠人の父ちゃんの旅館にタダで泊めてもらうんだ」

「おう!そりゃ名案だ!んじゃ、ガンガン働いてもらわにゃな!ガハハ!」


浮き輪を膨らましていた悠人が、

「中3の時もボランティアしに来てくれたじゃん。そん時に思ったんだけどさー」

首をかしげながら言う。

「順平がいると、なんだか女の子のお客さんが増える気がするんだよね~」


じーちゃんが、またガハハハと豪快に笑った。

「ペイ太郎は男前だからな!サルみたいなお前の顔じゃ、女なんか来やしねーよ!」

「なんだよ!じーちゃんだってゴリラじゃねーか!」

「うるせーな、サル!」

「なんだよ、ゴリラじじい!」

ゲラゲラと笑うオレたち。



真夏の太陽が、もうジリジリと照りつけていた。
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