待ち受けカノジョ。
順平は元気にすくすく大きくなって、ランドセルを背負う年にまで成長した。


しゃべり始めた頃「とおいたん」と私を呼んでいた順平は、いつの間にか「友美さん」と、ちゃんと言えるようになってた。


順平は私になついてくれて、嬉しかったなぁ。

たまに会う日がとても楽しみだったよ。



そして、恭平は研修していた美容室の店長になって、仕事もしっかり安定した。

もちろん、休みの日にバイトなんてしなくてもいいくらい、金銭面でも不安はなくなった。


私が恭平と順子のアパートまで、電車で1時間かけてお祝いに駆けつけた時、恭平が言った言葉に、正直驚いたよ。

「独立して自分の店を持つのが夢なんだ!」って。

高校の時あんなテキトーで遊び人だった恭平が、こんな真面目な大人になるなんてね。

守るべき人ができた男って、こんなに変わるんだって、感心した。


その時、私は死んだ母親の店を一部改装して今の店を開いてたから、いつか隣の空いているスペースを恭平に使ってもらおうかな、って考えてたわけ。


でも、もっと驚いたのは、恭平が突然順子の前で土下座したこと。

今後、店を開いた時のことを考えると、今俺に付いてくれているお客さんを逃したくない。

だから、これからはお客さんと食事に行ったり、プライベートでもお客さんと一緒にいる時間を作りたい。


そう説明した後、「順子、頼む!」と言って、恭平は床におでこをこすりつけた。

そんな恭平を見た順子は、ため息をフウッとついて、「しかたないわね」と言って笑った。


だから、私は気付いてあげれなかった。


その時、順子の心が壊れてしまったことに。
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