待ち受けカノジョ。
おじさんに頼んで、お母さんの部屋まで連れてきてもらった。


お母さんは、友美さんからの手紙を最後まで読んでいない。

全部読んでもらわなくちゃいけないんだ。

オレの前で。


おじさんは、『ドアの外で待機してるから』と小声で言って、お母さんの部屋のドアを開けてくれた。


大きい出窓の向こうに水平線が見える。

持ってきた紙袋を、フローリングの床に置いた。


「…お母さん、大丈夫?」

ベットに横になっていたお母さんが、ゆっくりと首を回してオレを見た。

「順平…」

さっきとは違う穏やかな表情に戻ったお母さんを見て、オレはホッとした。


「ごめんなさいね、取り乱してしまって」

「うん。もう大丈夫?」

「薬が効いてきたから大丈夫よ」


そうだ。

お母さんの苦しみを解放してやれるのは、オレだけなんだ。



「手紙、最後まで読んで」

お母さんはちょっとためらった後、ベットから上半身を起こしてオレの手から手紙を受け取った。


再び沈黙の時間が流れる。


その間、オレはお母さんの顔をずっと見ていた。

少しでも様子が変わるようだったら、ドアの向こうで心配しているおじさんを呼ばなきゃいけないから。
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