待ち受けカノジョ。
今度は何事もなく、お母さんは落ち着いた表情のまま、手紙を最後の一行まで読みきった。


「さっき、アルバム見せてもらったよ」

「…あなたの写真の?」

「うん。オレ、こんなにみんなから守られているなんて知らなかったよ。ふたりの父ちゃんと、ふたりのお母さん。4人親がいるなんて贅沢だよね、オレって!」

お互いクスッと笑って笑顔を見せあった。


でもその直後、お母さんの顔が急に険しく歪む。


「あなたに…あんなひどい事をして、本当にごめんなさい。ずっと、いつか謝らなきゃって思ってたの。でも、あなたに会うのが怖かった…」

「いいんだ。お母さんが悪いワケじゃない。誰も悪くなんてないんだ。悪いのがあるとしたら…」


枕元に置かれた、分厚い薬の袋。


「お母さんを苦しめた、あのやっかいな病気だよ」


スウッとお母さんの頬を涙が伝う。

「あなたが優しい子で、本当に良かった」


オレはひざまずいて、お母さんの手をぎゅっと握った。


それは、10年ぶりの暖かさ。


ぽろぽろと涙をこぼしながら、お母さんがオレを見つめる。

「順平、生まれてきてくれて、ありがとう。恭平と友美にも、お礼を言わなきゃね…」
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