待ち受けカノジョ。
「おーい!」

道路の方から、チリンチリンと自転車のベルの音が聞こえる。

「ペイ太郎!なにやってんだ、こんな所でボケーっとして!」

あ、悠人のじーちゃん。


「ヒマだったら俺の店手伝ってくれよ!今日は花火大会だから忙しいんだ!今だって焼きそばの麺足りなくて買ってきた所だよ!」


鼻がツーンとする。

唇がアヒルみたいにとんがってブルブルする。


「じ、じぃちゃあああん…!!」

なんだかしんないけど、じわっと涙も出てきた。


「おっ?おおっ!?」

じーちゃんは慌ててガシャガシャと自転車を停め、階段を駆け下りてきた。

「な、なんだよ、どうしたってんだよ!」


フラフラしながらテトラポッドの先を跳び越えて、オレの横に「どっこいしょ!」と座った。

「しけたツラしてんじゃねーよ。お前、キンタマついてんだろが?」

「キンタマ言うなぁ~」

止まらない鼻水をズルッとすするオレ。



ポーンポーンと、花火を知らせる音が町中に響き渡る。


「じーちゃん、オレ、分からないんだ」

「おう!なんだ、言ってみろ!」

じーちゃんが鼻息を荒くして腕を組む。


「子供って、なんで生まれてくるのかな」

「えっ!?そ、そりゃお前、男と女がアレしてだな…」


ちょっと!

「そんなこと訊いてんじゃないよ!オレが知りたいのは、なんでオレはこの世に生まれ落ちたのか、っていうこと!!」

「なんだよ!最初からそう言えや!」

じーちゃんは耳を赤くして、薄くなった頭をボリボリと掻いた。
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