待ち受けカノジョ。
誰もいなくなった部屋。

セミの鳴き声と子供の笑い声が遠くから聞こえる。


滝山くん…


私は一部始終見てしまった。

滝山くんの10年分の思いが、ほんの一瞬で消え去るのを。


なんで言えなかったんだろう。

もっと早く『あのこと』と言うべきだった。

そしたら、滝山くんも傷つくことなかったんだ。


『今の、忘れて』

その言葉が私の心をざわつかせる。
< 236 / 321 >

この作品をシェア

pagetop