待ち受けカノジョ。


「また私達のこと調べてここまで来たのね!?」

お母さんの声が荒ぶる。


…そうだよ。

この人が追ってくるから、私達は何度も引っ越して逃げたんだ。


「聞いてくれ!確かに探偵に調べさせてはいたが、それはお前達をつけまわすためじゃない!」

「じゃあ何のために!?」

「心配だったんだよ…お前達が」


沈黙が流れる。


苦しい…

私の心臓は締め付けられて、今にも破裂しそう。


「そんな事言っても、暴力を振るったあなたなんか信用できないわ」

お母さんのその言葉で、幼い頃の記憶がよみがえる。



バシッ!

夜中だった。

ドカッ!

いつもの音で目が覚める。

「止めて下さい、あなた!」

「うるさいっ!」

バシッ!

子供ながらに何が起こっているのかもう分かっていた私は、布団にもぐりこんで耳を塞いだ。


いつもこの人におびえて暮らしていたんだ。



「すまない。本当に悪かった。あの頃の私は仕事がうまくいかなくて、イラ立っていたんだ。お前達が突然いなくなって、私はそこで初めて無くしたものの大きさに気付いたんだよ」

「……」


お母さんは何も言わない。
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