待ち受けカノジョ。


「やり直してくれ!この通りだ!」

この通りって…

まさか、あのプライドが高いお父さんが?


「止めて下さい!土下座なんかしても無理です!」

「頼む、許してくれ!あれから診療内科にも通っているし、仕事も落ち着いた。今ならお前達を幸せにできる。信じてくれ!」


…お母さん。

お願い

許してあげて。

もう一度だけ、お父さんを信じてみようよ。

お父さんとお母さんが幸せにならないと…

私は安心して死ねない。


「…あなた?」

さっきとは違う、お母さんの落ち着いた声が聞こえる。

「見てみなさいよ、奈緒を」


…私?


「花嫁さんみたいでしょ?」

「ああ…綺麗だ」

「この子もいつか、結婚して親元から離れていくわ…。奈緒の結婚式には、ふたりで仲良く出席しましょう?」


お母さん…!


「ぐっ、うっ…」

嗚咽するお父さんの声が漏れる。

「だから、もう立って下さい。あなたの事は簡単には信じられないけど、私達も年取ったわ。奈緒と、私と、あなた。これからは3人で、穏やかに暮らしましょう?」

「ありがとう…すまない。本当にすまなかった…!」

お父さんとお母さん、2人のすすり泣く声が聞こえてくる。
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