待ち受けカノジョ。
オレは今、猛烈に走っている。

「奈緒!」

何度名前を呼んだだろう。

倒れたままの奈緒は、まったく動かない。

「奈緒っ!」

すれ違う通行人が、携帯に向かって叫び続けるオレを驚いた顔で見る。

かまうもんか。

分かったんだ。

奈緒を助ける方法が。

「奈緒!」


ポツッ…

水滴がオレの頬に落ちた。

見上げると、空一面が真っ黒い雲で覆われている。

くそっ!

こんな時に夕立かよ!

この携帯、防水じゃないんだから。

…頼む!


「奈緒!」

早く目覚めてくれ!

お願いだから!!

「戻って来い!奈緒っ!」


オレの所に…!!

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