待ち受けカノジョ。
「私がいなくなったら…病院行ってお母さんのそばに…いてあげて」

うん。


「おじさんと…友美さんと仲良く、お店がんばっ…て」

うん、うん。


「本…あの本を…」

「本なら今持ってるんだ。前におばさんに頼んであったんだよ。安心して、ちゃんと返すから」

「よか…た」

ニッコリと微笑む奈緒。

奈緒、あの本絶対読んでない。

もっと前に分かっていれば、もっと話せたのに。


「滝山くん…今まで本当に…ありが…」

奈緒の体がユラッと揺れる。

「奈緒っ!!」

「幸せに…滝山くん、幸せに…なっ…」

「奈緒!しっかりしろ!!」

「…言いたかった…ずっと」

「何?なにを!?」

「子供の頃…思い出して。私の名…前」


その言葉を残して、

奈緒はオレの目の前で崩れ落ちた。

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