待ち受けカノジョ。
「奈緒っ!」

何度呼びかけても、返事は返ってこない。

「起きてくれ、奈緒っ!」

倒れたままの奈緒は、目を覚まさない。


「奈緒…」


もし、奈緒が消えたら…

携帯を両手で握りしめる。

オレは

どうしたらいいんだよ…

全身から力が抜けて、地面に膝をついた。


「奈緒、オレ…」


分かったよ。

オレには奈緒が必要なんだ。

こんな事になるまで、全然知らなかった。


「くっ!」

雨はすっかりやんだのに、熱い水滴が頬を伝う。


オレは…

大事な人を救えないのか。

改めて無力な自分を知った。


「…ゴメン!」

携帯を胸に抱きしめてうずくまる。
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