待ち受けカノジョ。
「…おい、どうした?」

上の方から男の人の声がして、顔を上げた。

知らない中年のおじさんが立っている。

「そんなずぶ濡れで何やってんだ。具合でも悪いのか?」

おじさんは心配そうにオレを見る。


「け…携帯が壊れて…」

涙を腕でゴシゴシぬぐった。

「大事な人と、連絡がとれないんです」

「男の君がそんな大泣きするほどか?」

「はい。命が…今にも消えそうなんです」

「なに?そりゃ大変だ!うちの電話を使いなさい!」

おじさんに抱えられながら立ち上がった。

「うちはここの電気屋だから、とりあえず中に入ろう」


オレはよろついた足を止めた。

「ダメなんです、この携帯じゃないと」

「…ちょっと見せてごらん?」

おじさんにうながされ、両手を開いて携帯を見せた。


「あー、電池がもうイカンな」

「はい。どこの店に行っても在庫がないみたいで」

「まぁ、そうだろうな…。んっ?」
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